202 新兵器で戦場を変える覚悟を持て

ASPIRE®全般

近年、米軍は花形のスナイパー部隊を縮小し、ドローンによる精密爆撃へのリプレースを進めている。大金を投入して育成した精鋭スナイパーに見切りをつけたのだ。理由は、ウクライナ戦争で死傷者の7割以上が攻撃ドローンによると推定されている事だ。ドローンは塹壕に隠れている敵でも真上から発見し精密に爆撃する。現代の戦場ではスナイパーによる水平狙撃だけでは勝てない事を、戦場の兵士が誰よりも知っている。

「いつの時代も、新兵器を敵より先に導入し、全軍を変革した軍隊が生き残る」と、元英国特殊部隊指揮官ダミアン・マッキニーは言う。「戦略はどう変わるか？」「未来の戦場はどうなるか？」を予見する力が問われている。
織田信長の鉄砲導入は好例だ。

AIがビジネスに革命をもたらすことに疑問の余地は無い。人間を超える能力とスピードを持ち、低賃金で24時間働く新兵器を使いこなせる組織が生き残る。

企業の運命を決めるのは、我々ビジネスリーダーの決断速度だ。

深掘

ウクライナとロシア双方の死傷者の7割以上（一説には8割以上）がドローンによる攻撃だという推定は、各国の軍隊に衝撃を与えています。開戦以来、両軍が驚異的なスピードでドローン戦を進化させた結果です。ウクライナ軍でドローンの操縦に最も長けているのは、新たに採用された若いゲーマーだと言われます。一方で、戦場の英雄として重用されたスナイパーの役割が、「ドローンを打ち落とす仕事」にシフトしてきているそうです。地上軍の作戦も、大規模部隊がドローンに発見されないように、少人数で空から見えない場所を移動することが増えたと言います。

Mission Leadership®の観点から強調したいのは、これらの変化が全て現場起点だという事です。
作戦本部が理論や統計を基に考えているだけでは、急速に変化する戦場に対応できないのです。

ウクライナで顕在化した新たな戦争形態にいち早く対応したのは米軍です。短期間でスナイパー部隊の縮小や配置転換を進めていることがメディアでも取り上げられ始めました。
Mission Leadership®の観点から更に補足したいのは、「米軍はスナイパーの雇用確保に優先順位を置いていない」事です。彼らの目的は「敵に勝つ事」であって「雇用を守る事」ではないからです。

近い将来、「最終発射ボタンを押すのは、人間ではなくAIを搭載したドローンになる」とも言われています。英米軍のトップは、「敵か民間人かを判断するのは人間しかできない。だから最終ボタンは人間にしか押させない」と公式発言を繰り返しています。しかし、索敵→発見→攻撃の全てを自動で行う技術が確立された現在、「新兵器を敵より先に導入し、全軍を変革した軍隊が生き残る」というプリンシプルに照らせば、モラルの欠如した敵がやる前に自軍がやるのは必然でしょう。

AIはビジネス界でも猛威を振るっています。ChatGPT４の登場以来、「簡単な契約はAIが上みたいだよ」「膨大な市場リサーチは人間では到底勝てないな」「知識がゼロでもプログラミングが出来るぞ」「デザイナーに頼まなくてもクオリティの高いビジュアルを５分で描いてくれちゃったよ」などなど、「この分野は人間にしかできない」と言われていた仕事が雪崩を打ってAIにリプレースされています。
更に、AIと人型ロボットとの組み合わせにより、販売やサービスなど人力が必要とされる現場でも革命的な変化が待っています。既にロボットメーカーの株価急騰が目立ち始めました。

戦場でもビジネス界でも、AI革命は必ず起こります。
急速なテクノロジーの進化に対しては、中央集権型組織では絶対に対応できません。現場起点の発想が無い人間は使い物になりません。会議室に6か月籠って作り上げた中期戦略が1日で時代遅れになる世界が来たのです。

経営者には、未来を見通す洞察力と共に、権限委譲を徹底し現場主導で変化を起こす覚悟が求められます。
現場には、経営者の描く未来図を理解し、日々進化する技術を自律的に活用する行動力が求められます。
その為の最短コースは、組織全員でMission Leadership®をマスターする事です。

ふと、ゴルゴ13も失業かなー、なんて考えてしまいました。彼の超長距離射撃の技術は時代遅れになったからです。ただゴルゴなら、「射撃は単なる手段だ。ターゲットを殺すという目的の為にドローンなりAIなりが必要ならば、それらを使ってミッションを成功させるまでだ」と、冷静に言い放つ姿が目に浮かびます。
明確な暗殺目的（WHY）とターゲット（WHAT）の為に、手段（HOW）を100%任されるというゴルゴと依頼者の関係は、正にMission Leadership®ですからね！